“130万の壁”を超えるときに知っておくといいかもしれない話
これは慶應理工 アドベントカレンダー2021 19日目
およびKCSアドベントカレンダー2022 6日目の記事です.
1年遅刻したので,多少中身を書き直して今年のアドカレに使うことにしました...そして今年も1日遅刻しました...
自己紹介
はじめまして,永遠のB2だったikpです.
だったのですがやっとB3に進級しました.
アドベントカレンダーには毎年遅刻しがちです.
はてブは強い人びとが皆使っているので気軽に書けないし,noteは個人的にあまり好きではないので初Mediumにしてみました.
逆張りオタクかよ,というツッコミはぐっと飲みこんでいただけると幸いです.
特に何もしていないですが,趣味で自宅に物理サーバを飼っています.
あとAICでサーバの運用をやっていたりします.
(レスポンス遅めで申し訳の極み...)
本題
さて,大学生の皆さんの多くはどこかしらでアルバイトや有給インターンをして収入を得ていると思います.この記事ではそのような一般的な大学生が得られるレベルの収入(100~300万程度)を対象としています.
普段アルバイトをしつつ,気まぐれで応募した有給インターンにたまたま受かってしまった場合,年間の収入がいわゆる”103万/130万の壁”を超えることはよくある話です.そうなると確定申告が必要になってきますが,このとき注意が必要なのは税金の話だけではありません.
収入と所得
ここからの話を理解するために,まずこの2つの違いを把握しておく必要があります.
収入とは「税金や保険料・年金などを源泉徴収される前の,給与や株の配当などで得られるお金」です.
一方,所得とは(○○所得,の区分によっても異なりますが)「収入から経費(支給された交通費など)や各種控除を差し引いたもの」になります.所得税額はこの所得金額によって変わるので,たとえば国民/個人年金を支払ったり,健康保険料を支払ったりすることで控除額を増やし,結果的に節税をすることができたりします.そのため,103万を多少超えた収入があっても,この控除額を増やすようにすることで節税できます.ただし様々な条件があったりするので,控除を受けたい項目についてはきちんと調べておきましょう.
一点厄介なのは,所得金額や控除額は所得税(国税)と住民税で異なる場合がある,ということです.
例えば,2022年現在で個人年金保険料控除の上限額は所得税が4万円,住民税が2.8万円となっています.それ以外にも関連する条件があり,これも所得税と住民税で異なる上,たいていの場合は住民税のほうが制約が厳しいです.なので,所得税の控除のことだけを考慮して計画を立てていると,想定以上のお金を住民税に持っていかれます.節税の計画を立てる際は基本的に住民税ベースで考えたほうが良いと思います.
被扶養者として加入している健康保険
たいていの学生は親の加入している健康保険組合に被扶養者として加入していると思いますが,自分の年収によっては親の扶養を外れ,国民健康保険に加入する必要があります.
このボーダーというのは(親が加入している健康保険組合にもよりますが)本人の年収が130万というのが一般的です.
ここでのポイントは,年収の目安は”収入”でチェックされるということと,全日制の学生は原則社会保険に加入できないということです(そしてこれは,現在の日本のシステムが非常に狭い範囲の学生しかカバーできておらず,機能不全を起こしているということの証左です).
まず一点目についてですが,被扶養者でいられるボーダーの130万は”所得”ではなく”収入”です.つまり,あなたが1年間に受け取った額面どおりの金額が130万を超過した時点で親の扶養を外れます.額面どおりですので,支給された交通費等はもちろん含みます.
また,この年収130万が上限というのは年度の途中でも適用されます.具体的には,現時点までの直前3か月間の平均収入で計算して,年間の収入が130万を超過することが見込まれる場合は扶養を外れます.その3か月間だけ月30万円の給与を受け取り,残り9か月一切収入が無くても外れます.ただし,直前3か月間で都度計算するため,先ほどの例では扶養を外れてから2か月経つと「2か月間収入0円,先々月のみ収入30万円」となります.そのため3か月の平均収入は10万円,年間の収入見込みは10×12=120万円となり,再度被扶養者となって親の健康保険に加入することができます.この再加入は任意のタイミングで可能なので,平均収入から計算した年収見込みが130万円を切るようになったら再加入をお願いしてみましょう.健康保険料を浮かせることができます.
では二点目についてです.諭吉の下僕と化した皆さんの大多数は全日制の学生になっていると思いますが,私たちがアルバイト・インターン先の社会保険に加入することは原則不可能です.これは日本の法律でそのように決定されている (保保発0513第1号) からなのですが,たいへんうれしいことに学費自腹系学生については一切考慮されていません.そのため,「学業に専念している本格的就労の準備期間にある」学生の年収上限130万を超過した私たちは,何の補助制度もなく国民健康保険に加入する必要があります(加入しない選択もできますが,その場合は医療費の負担が全額自費になります).さらに,昨年度末にこの法律は改正 (保保発0318第2号) されましたが,条件を見てみましょう.”学生でないこと”という項目がきちんと存在しています.すばらしいですね.
一点注意があるのですが,ここにおける学生には休学中の方は含みません.ですので,休学中かつ勤務時間の規定を満たしていれば勤務先の社会保険に加入することができます.国民健康保険に関しては年収~300万程度であればせいぜい年数万円なので別に社会保険に加入しなくても問題ないのですが,次に説明する国民年金には大いに効いてきますので検討してみてください.
ここまで書くと,「なんで奨学金申し込まんの?」というツッコミが各所から聞こえてきそうです.確かに,家庭の年収が審査基準に引っかからなければ給付型奨学金に申し込んだほうがはるかに良いです(貸与型は奨学金ではなく実質ローンですので奨学金としてカウントしていません).ただし,家庭に十分な収入があるにも関わらず,家庭環境等の要因により学費を自分で賄う必要のある方は世の中に大勢いらっしゃると思います.そのような方々は,今の日本のかじ取りの中心にいて「旧来の家族の在り方」を重視する世代の方々からは外れ値としてみなされるため,社会的なサポートは期待できません.そのため諸々を考慮して動く必要が出てきます.
国民年金
先ほど,扶養を外れた学生は社会保険に原則加入できない,ということをお伝えしました.そして国民年金における学生特例の適用対象は健康保険組合が定める”年収130万”と同条件です.もちろん交通費等も含んだ額で計算されます.たとえ学費がそこから捻出されていようと関係ありません.そこに何の補助制度も無いことも国民健康保険と同じです.そして国民健康保険と異なるのは,能動的に加入しなくても払わなければ取り立てが来る,ということと年度毎の額の上り幅が半端ない,ということです.日本にいる限り逃げられませんのでどうにかこうにかして払いましょう.まとまった金額 (20万程度) が用意できるのであれば年度初め (5月) にまとめて納入 (前納といいます) ,もしくは2年分を前納すると割引されるのでお得です.他にも,5月・10月までにそれぞれ6か月分を前納することでも少額の割引が得られますので,こちらの手を打つのもおすすめです.返ってくる見込みの少ないものを満額払うのは非常に馬鹿馬鹿しいので,削減できるものはできるだけ削減しましょう.
控除
さて,”130万の壁”を超えた学生には国民健康保険と国民年金が重くのしかかってくるわけですが,これらは支払うことで所得税・住民税の控除対象になります.
年金が約20万,健康保険が数万,これらと個人で加入している保険等があればそれも加味して年30万程度が一般的な学生における控除対象です.
ただし.これらの控除は所得税・住民税には効きますが,ここまで何度も言及してきた”年収130万”では考慮されないので注意が必要です.すばらしい制度ですね.
というわけで,年収130万程度では次年からの実質年収は100万以下になります.年収150万を超える見込みが無いなら扶養を外れないほうがいいとよく言われますが,個人的にはメリットを感じられるにはもう10万,年収160万以上が必要ではないかなと感じています.
まとめ
お金まわりの話,特に我々のような外れ値学生におけるお金まわりの話は自分で調べないと誰も教えてくれないし,そもそも調べても情報が散逸していてわかりづらいと思います.私はそう思いました.
本記事が少しでも皆さんの情報収集のお役に立てたらうれしいです.
(情報は2022年 (令和4年) 当時のものになっています.最新の情報は各省庁のサイトから確認してください.個人ブログ等は内容が古い・年収130万以下を対象としていることが多く,ソースとしてはあまりおすすめしません.)